不法滞在、不法就労について-2012年2月号-
Q :今月は不法滞在、不法就労についての知識を深めるための例題を作りました。次のうち正しいものはどれでしょうか。 1) ワーキングホリデービザを保有してレストランで働いているAさん。 ワーキングホリデービザが失効する前にワークパーミットを申請した。申請結果が届くまでの間は同じ雇用主の下で合法的に働ける。
2) Bさんにワークパーミット延長の却下レターが届いた。レターには直ちにカナダを出国するか、ステータス回復とワークパーミット再申請を90日以内に行うように指示があったので、再申請すれば結果が出るまでは合法的に働けると解釈している。
3) Cさんは不法就労が見つかりCBSA (カナダ国境サービス局) のオフィサーに現行犯で逮捕された。身柄の拘束は免れたがパスポートを押収された。オフィスに出向いてパスポートを返却してもらい直ちに出国しようと思う。
CBSAの役割の一つに滞在許可証を持たない外国人を見つけだし、国外退去させる強制執行があります。現在は国家の安全を脅かす者、犯罪行為や犯罪組織に関わる者、難民申請を却下されたにもかかわらず引き続き残留する外国人の追放を最優先としていますが、ビザ失効後の不法滞在者、不法就労者も優先順位は低いもののその対象となっているので注意が必要です。一旦、国外退去命令が発行されると理由によって1年または2年、あるいは特別な許可がない限り永久にカナダへの再入国の道が断たれてしまう可能性があります。まずAさんはインプライドステータスが適用され、雇用主、職種等が同じである限りはワーホリビザ失効後も申請結果が出るまでは合法的に就労できます。Bさんの場合は、ワークパーミット延長の却下レタ� ��が届いた時点で就労を中止しなければならず、ステータス回復申請期間中は就労できません。Cさんの場合は直ちに出国できず、Immigration Divisionが行うAdmissibility Hearingに召喚された上で、不法就労が確認されると国外退去命令が出されます。また、ヒアリングのプロセスが省略されてCBSAから直接国外退去命令が出される場合もあります。いずれにしても、カナダ出国の際に空港オフィサーに必要書類を提出し、出国したことの記録が確実に残るようにしなければなりません。従って、今回は1)が正解となります。
住込みナニークラスのオープンワークパーミット- 2012年1月号
Q :12月15日付けで住込みナニークラスのオープンワークパーミットについてルール改定がありました。今月はその内容も含めた本プログラムの理解を深めるための例題です。次のうち正しいものはどれでしょうか。
1) 現在ワーキングホリデービザでホームステイ先の3歳の子供の世話をしているAさん。給与明細をもらっているので永住権申請の際に必要な就労期間に含めたいと考えている。
2) 2年間の住込みナニーとしての就労期間を終えて永住権を申請するBさん。今回の改定により審査が始まる前に最長4年間のオープンワークパーミットを取得できることになった。
3) 住込みナニークラスから永住権を申請するには申請前にナニーとして3900時間のフルタイム就労期間が必要であるが、Cさんは残業や雇用主のかけもちで1年半後に申請できると考えている。
住込みナニー(リブインケアギバー)は幼児や老人、障害者の世話を住込みで提供する職業です。人手不足のため外国人の就労ビザと、その後の永住権取得のための特別なプログラムがあり、2010年には本プログラムから約1万4000人が永住権を取得しました。問題はプロセスタイムの長期化で、従来イニシャルアセスメントが終了するまでの期間(現在約1年半) は、オープンワークパーミットを取得できませんでしたが、今回の改定で申請後間もなく発行されることとなり、早期にナニー以外の職種に従事することも可能になりました。次に永住権申請前の就労期間の要件についてですが、最初の住込みナニーの就労ビザ発行日から4年間のうち24カ月のフルタイム、または、3900時間(但し、少なくとも22カ月の就労期間が必要)の就労後に永住権を申請できることになっています。Aさんの場合ですが、ワーキングホリデービザやその他のオープンワークパーミットは雇用主指定の住込みナニー用の就労ビザではないので、永住権申請時において就労期間として申告することはできません。また、Cさんの場合は例え残業によって必要時間数が満たされていても、前述した22カ月の就労期間を満たさなけれ� ��ならず、また同一期間における複数の雇用主宅への"住込み"は事実上不可能なので要件を満たさないことになります。従って、今回の正しい回答は2)のみとなります。
Ministerial Instruction (MI-4)について- 2011年12月号
Q :11月4日付けで移民省大臣よりMinisterial Instruction (MI-4)が発表されました。今回はその内容について取り上げます。次のうち正しいものはどれでしょうか。
1) 11月5日以降、カナダの大学の修士課程または博士課程に在籍する留学生は、卒業後1年以内に連邦スキルワーカーの申請が可能となった。他のカテゴリーのようにポイントを満たすことや、1年以上のスキルワーカーの職歴を持つことは要求されていない。
2) ファミリークラス(両親、祖父母の呼び寄せ)の新規申請書の受け付けが休止となった。今後2年間のモラトリアム期間中に政府内で新しいプログラムの導入が検討される。
3) ファミリークラス(両親、祖父母の呼び寄せ)休止の代わりとして、カナダ市民権または永住権を持つ子供や孫を訪問する両親、祖父母は、無条件に1度の申請で最長2年間の"スーパービザ"が発行されることになった。
連邦スキルワーカークラスにはこれまで指定職種カテゴリー、雇用保証カテゴリーがありましたが、MI-4によって博士号留学生カテゴリーが新たに追加されました。カナダの州政府認可の私立または公立の大学で博士号取得コースに在籍中であり取得に向けて既に2年間を修了済み、または申請時から遡って12カ月以内にカナダの博士号を取得済みであることが要件となっています。更に、67ポイントのパスマークを満たすこと、及び1年以上のスキルワーカーの職歴が必要なのは他のカテゴリーと変わりません。また修士課程は対象となっていません。次にファミリークラス(両親、祖父母の呼び寄せ)については、従来から未審査ファイル数の増加とプロセスタイムの長期化が問題となっていましたが、今回の発表で2年間の新規申請書� ��付の凍結とその間新しいプログラムを開発することが決定されました。また、これと同時に両親、祖父母が10年間にわたって自由にカナダに入国できる"スーパービザ"が導入されることになり、この期間中最長2年間ステータスを更新する必要なく長期滞在できるようになります。尚、このスーパービザ発行は無条件ではなく、1)健康診断の受診、2)カナダのプライベート医療保険への加入、3)収入要件を満たす子供または孫による経済的援助の保証が必要とされます。従って正しい回答は2)となります。
カナダに家族を呼び寄せる- 2011年11月号
Q :移民者の中には日本に残した家族をカナダへ呼び寄せたいと考える方もいらっしゃると思います。今月はファミリークラスで親族をカナダに呼び寄せるケースを取り上げました。次のうち実現可能性のあるものはどれでしょうか。
1) Aさんの妹は24歳独身で来年3月に大学院を卒業し就職する予定である。これまで一貫して親に学費を払ってもらっていた。妹はカナダ移住を強く希望しているため、親をファミリークラスで呼び寄せる際に同伴者として申請に加えることにした。
2) Bさんは高齢の両親をカナダに呼び寄せることを検討中である。Bさんはカナダ人の夫との間に子供が1人、また夫と前妻との間に生まれた子供2人を引きとり養育しているので計5人家族である。昨年の2人の収入は合わせて10万ドル弱だった。
3) Cさんは現在日本で一人で暮らしている父親をカナダに呼び寄せたいと考えているが、父親は半年前から腎臓を患い人工透析を受けている。但し、カナダ移住後も治療費を自己負担できるだけの十分な資産を持っている。
カナダ移民法では配偶者、コモンローパートナー、22歳未満の子供以外にも、両親や祖父母、親の同伴者として22歳未満の兄弟などを呼び寄せることができます。また、兄弟が現在22歳以上でも22歳になる前から親に経済的に依存してフルタイムの学生を続けている場合は、親の同伴者として呼び寄せることが可能です。しかしながら、ランディングの際に学校を既に卒業し経済的に自立していたり、結婚している場合は永住権を発行されません。つまり、Aさんの妹は申請時に要件を満たしていたとしてもその後就職してしまうことで満たされなくなります。次にBさんは両親を呼び寄せることで家族メンバーは7人となります。申請時に家族メンバーを経済的に支えるための収入要件を満たす必要がありますが、現在7人家族の最低収入金 額は58827ドルとなっているため、Bさんはこの要件を十分満たしています。最後のケースですが、移民法によるとカナダ市民の平均以上の医療費がかかると予想される申請者には永住権を発行しないとされていますが、見積もられる医療費はケースバイケースなので全く可能性がないわけではありません。よって回答は2)と3)になります。
LMO(Labor Market Opinion)の取得可能性について- 2011年10月号
Q :今月はワークパーミット申請に必要なLMO(Labor Market Opinion)の取得可能性について考えるためのケースを作りました。次の各ケースの問題点は何でしょうか。
1) ワーキングホリデービザでホテルのベッドメーキングの仕事に携わるAさん。雇用主にビザの延長を相談したところサポートしてくれるとのこと。但し、書類にはサインするので全て自分で準備するように言われた。これまでにLMOを申請したことがないようだ。
2) LMO承認のワークパーミットで日本食レストランで働くBさんはビザ延長を希望している。問題は実際に支払われている賃金がオファーレターの金額より遥かに低いことと、今年T4を発行してもらえずタックスリターンもしていないことである。
3) ワーキングホリデービザでディッシュウオッシャーとして働くCさん。ビザ延長のサポートを約束した雇用主は実際にはあまり乗り気でないのか申請作業が一向に進まない。コンサルタントを雇って雇用主をうまく巻き込んで作業を早めてもらおうと考えている。
今年4月の移民法改正によってLMOの取得要件が厳しくなり、要求される情報量の増加とプロセスタイムの長期化が顕著となっています。また、LMOのプロセスは本来雇用主のイニシアティブによって進められるものですが、その点を誤解するケースも散見されます。まず、1)のケースはそもそもベッドメーキングのように長期のトレーニングを必要としないロースキルの仕事は、残念ながら現在の景気動向を考慮すると許可される可能性がかなり低いと考えられます。また、書類は本来雇用主が作成するもので、雇用主がLMOの申請要件や手続きの理解を就労者に丸投げしている場合はかなりの危険信号と言えます。2)のケースは雇用主が約束した就労条件を遵守していないことが明らかであり、オフィサーからこの点を突か れた場合に正当な申し開きができないと却下につながります。最後のケースは雇用主にサポートの意思が希薄または優先順位が低い場合です。この場合コンサルタントを雇っても会社の方針や優先順位を変えたり、雇用主に無理強いすることはできないので、結局徒労に終わる可能性が高いと言えます。まずは雇用主とよく話し合ってどの程度本気なのかを見極めることが重要だと思われます。