2012年5月18日金曜日

在ニューヨーク(New York)総領事館:総領事からの挨拶


櫻井前大使からのメッセージ (ニュースレター Japan Info より)

From the Ambassador's Desk 2009年3月号(3月20日発行。原文はこちら)

3月20日に大使・総領事の職を離れることとなりました。大使としての3年間も含めると、米国には通算24年間滞在しました。この職を拝命するまでは民間企業に勤務しておりましたが、その民間での経験や米国滞在で学んだ感覚を生かしながら、在ニューヨークの皆様のお役に立てるように、さらには日米関係がより一層強固なものになるように、微力ながら努力して参りました。

総領事館にとって危機管理・邦人保護は最も重要な課題であり、皆様の安全確保のための緊急事態に備えた対応の強化に努めてまいりました。この3年間では電話による邦人安否確認システムが導入されましたし、総領事館として、危機対応意識を常に持つように館員一同心がけてきました。

また、文化交流や人物交流も総領事館の重要な役割ですが、記憶に残っているイベントを一つ挙げるとすれば、大勢の方にご尽力頂いた、Japan Day@セントラルパークでしょう。草の根レベルにおける日米両国の相互理解促進の一助となったと感じています。Japan Dayは今年で3回目を迎えますが、ニューヨークの恒例行事として定着していくことを希望しています。

日本企業の支援にも積極的に取り組んで参りました。例えば、各州の州知事・政府関係者と民間企業の橋渡しとなるべく、2007年にはコルザイン・ニュージャージー州知事、マンチン・ウエストバージニア州知事、2008年にはレンデル・ペンシルベニア州知事との懇談会を開催しました。こうした取り組みを、総領事館としましても是非継続していきたいと考えております。

さらに、「お客様第一」精神の下、開かれた総領事館を目指して、皆様とのコミュニケーションを大切にして参りました。昼休みに窓口をオープンしたり、申請用紙の書式を改めたりするなど、種々の努力を積み重ねた結果、お客さまの総領事館のサービスに対する評価もコンスタントに向上してきました。皆様の声に耳を傾けサービス改善に努めたことで、皆様からの評価も上がり、その後館内からもさらに知恵を出し頑張ろうと自発的に努力する気運が出てきたことは、組織を束ねる者として大変嬉しく思っています。

今後とも、総領事館として、日米交流促進および在ニューヨークの皆様へのよりよいサービスの提供に取り組んで参ります。皆様からも是非、当館に対するご意見、ご要望をお寄せ頂ければ幸いです。

私自身につきましては、4月にニューヨークに戻り、ジャパン・ソサエティー 理事長の職を引き受けることになっています。ジャパン・ソサエティーは米国の非営利団体ですが、場所は変わっても、日米間の草の根レベルでの相互理解に邁進し、日米関係の強化に貢献したいと考えております。

末筆ながら、今後とも、当館への皆様方のご支援とご協力をお願い申し上げます。

From the Ambassador's Desk 2009年2月号(2月24日発行。原文はこちら)

先月後半に1週間ほど、久しぶりに日本に帰国しました。米国と同様、日本の経済状況は厳しく、特に、12月には失業率が4%を上回るなど、雇用情勢は依然として非常に厳しいものがあると実感しました。人々の雇用や生活を守るため、日米両国は緊急の課題として協調してこの危機を乗り越える取り組みを強化する必要があるとの思いを強くしました。

このように困難な状況が続く中で、日本では今、オバマ大統領が多くの人々を惹きつけてています。オバマ氏に関する本が多数出版されており、オバマ氏のスピーチ集もよく売れているそうです。なかには英語学習に活用する人もいるようです。「Yes, We Can」を合い言葉に当選したオバマ大統領の沈着で勇気溢れるメッセージには、国籍にかかわりなく、共感したり、勇気づけられたりする人が多いということを示していると思います。

さて、2月16日から18日まで、クリントン国務長官は、就任以来初めてとなる外国訪問として日本を訪れ、日米外相会談、麻生総理表敬や、拉致被害者家族との面会、沖縄駐留海兵隊のグアム移転に関する協定への署名などを含む、多忙な日程をこなされました。クリントン長官は、「日米同盟は米国の外交政策の要である」と述べられましたが、今回の日本訪問は、そのようなオバマ政権の方針を具体的に示す極めて有意義なものであったと思います。

さて、すでにご承知の方もいらっしゃるかもしれませんが、西宮伸一前北米局長が私の後任に決まりました。皆様方におかれては、大使が交替しましても、今後も総領事館へのご支援とご協力をお願い申し上げます。任期が終わるまでのあと一か月間、全力で職務を全うし、後任にしっかりと引き継ぎたいと思います。

From the Ambassador's Desk 2009年1月号(1月28日発行。原文はこちら)

 

明けましておめでとうございます。皆様よいお年を迎えられたでしょうか。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

一年の始まりは、過去を振り返り、新しい目標を立てるよい機会ですね。私は、着任以来、職員全体の意識改革に取り組み、昼休み時間も窓口を利用できるようにするなど、総領事館の各種サービスの向上に努めてきました。その結果、昨年11月に行ったアンケート調査では、来館者の83%の方から領事部窓口のサービスが「非常によい」との回答を、13%の方から「良い」との回答を得ました。一昨年の調査では「非常によい」と答えた方は58%、「良い」は38%でしたから、大きく進歩したことになります。

しかし、民間出身の大使として、私はこの数字に満足しているわけではありません。全館員が参加するスタッフミーティングの席上で、「民間企業ではコスト削減を目標に掲げているが、コストゼロにはならない。従ってこの目標はいずれ破綻するのは誰にでもわかるはずである。しかし、それでも企業は目標に向かって努力をしている。アンケート調査の結果がよかったからといって、ここでサービス向上の目標を取り下げることはしない」と話しました。今後も皆様からの忌憚のないご意見を頂き、「開かれた総領事館」を目指し、更なるサービスの向上に努めて参ります。

さて、1月20日は歴史に残る大統領就任式でしたね。米国の人々、とりわけ200万人以上とも報じられているキャピトル・ヒルに集まった人々の姿に、経済危機、雇用、格差などの困難な課題が多い中で、この国の人々が新大統領に寄せる期待の大きさを感じました。新政権の下においても、日米同盟がアジア太平洋地域の平和と繁栄の基盤であることに何ら変わりはなく、日本政府としては、新大統領の就任を心から歓迎し、新政権と協力して、北朝鮮の核問題等のアジア地域の安全保障に関わる問題、テロとの戦い、地球温暖化問題等に取り組んでいきます。

From the Ambassador's Desk 2008年12月号(12月18日発行。原文はこちら)

 

2008年も残りわずかとなりました。皆様も多忙な師走の時期をお過ごしのことと思います。

この1年を振り返ってみると、日米両国にとって多くの重要な出来事がありました。まず、日米で新しいリーダーが誕生しました。日本では9月に麻生政権が発足し、米国では11月に、歴史に残る選挙戦の末、オバマ候補が次期大統領に選出されました。この2年間、日本では総理交代が相次ぎましたが、日本の基本的な外交政策は変わりませんし、米国が重要なパートナーであることに変わりはありません。2009年も、新しいリーダーのもと、日米関係がより一層強固なものになることを望みます。


krystiショック

今年日本は、5月末に第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)を、7月には北海道洞爺湖サミットを主催し、多くの成果をあげました。今年後半に入って、世界はかつてない規模の金融危機を経験しました。11月には20か国のリーダーがワシントンに集まり、対応策を話し合いましたが、麻生総理は日本の支援策を発表するとともに、他の諸国に更なる支援を呼びかけました。来年も、世界経済、環境保護、開発等の地球規模の様々な課題に対処するため、国際社会において日米両国は重要な役割を果たしていくことになると思います。

当地ニューヨークに目を転じますと、6月、今年で2回目を迎えたJapan Day @ Central Park 2008は、4万人の方々にご参加頂き、大盛況のうちに終わりました。こうした民間の草の根レベルの交流が、日米両国の架け橋となるということを肌で感じた1日でした。次回のJapan Dayの予定も、ホームページ等で随時お知らせしていきますので楽しみにしていて下さい。

11月には、ニューヨーク、ニュージャージー及びプリンストンの補習授業校卒業生を公邸に招いてレセプションを行いました。当日は、米国の陸軍に所属しイラクから帰ってきたばかりという卒業生や、当地でアニメアーティストとして活躍している卒業生も駆けつけてくれました。詳しい報告は別の機会に譲りますが、彼らが日本との絆を大切にし続けてくれていることを非常に頼もしく思いました。来年も様々な機会を捉えて、草の根レベルでの親日家の輪を広げるお手伝いをしていきたいと思います。

私は年に数回教会へ行くだけのクリスチャンですが、それでも毎年クリスマスに教会へ出かけると、身の引き締まる思いがします。皆様、どうぞよいクリスマスと新年をお迎え下さい。

From the Ambassador's Desk 2008年11月号(11月17日発行。原文はこちら)

 

11月4日、米国は大統領選挙一色に染まりましたね。私は、1980年からこれまでの間に、米国で5回の選挙戦を見てきました。今回の選挙は、選挙活動期間が2年近くにも及び、かつてない盛り上がりを見せました。米国民の選挙や政治に対する関心の高さや、ボランティア達の熱心さを実感しています。

今回の選挙で注目されるのは、党派を超えた議論が繰り広げられたことです。これまで、民主党と共和党の間では、銃規制、妊娠中絶、同性愛者の権利等の争点に関する党路線がはっきりと分かれていましたが、今回の選挙ではこうした過去の図式にとらわれることなく、主要な争点について超党派の議論が活発に行われたように思います。

また、歴史的な投票率を記録したと報じられていますが、とりわけ、多くの若者たちが政治に関心を持ち、投票所へ向かい一票を投じたとことは印象的でした。政治の若返りを目の当たりにしたようで、私は大変感銘を受けました。

日本との関係で言えば、私は民主党の掲げる目標や基本的な考え方は、一般的にいって日本人の多くが共感できるものだと考えます。例えば日本では、銃規制に賛成する声が多く、また、所得格差やこれに起因する医療・福祉の格差については敏感です。共和党政権の方が日本にとって有利だと論ずる日本のメディアもありますが、私は、民主党的な考え方が、日本人の基本的な考え方とそれほど乖離しているとは思いません。バラク・オバマ次期大統領のもと、日米の協力関係がさらに深化することを期待しています。

さて、金融危機などの困難な課題が続くなかで、学術や文化の面では、喜ばしいニュースもありました。10月初旬には、米国籍を取得した南部博士を含めると、4人の日本人科学者がノーベル賞を同時受賞するという快挙を成し遂げました。また、日本政府は、11月3日を「文化の日」とし、文化・芸術・スポーツ等の様々な分野で活躍された方々を表彰し、その功績を称えています。当地ニューヨークからは、日本文学研究の大家であるドナルド・キーン=コロンビア大学名誉教授が文化勲章を受賞しました。そして、スポーツ界では、レナ・ラスティ・カノコギさんが、柔道の国際的な普及に貢献したことから旭日小綬賞を受賞しました。受賞者の皆様のご健勝と益々のご活躍を、心よりお祈りいたします。若い世代の方々にも、� ��れを励みにそれぞれの分野で頑張ってほしいものです。

From the Ambassador's Desk 2008年10月号(10月20日発行。原文はこちら)

 

皆様、秋の季節をいかがお過ごしでしょうか。

日本では、麻生総理の率いる内閣が発足しました。9月25日、総理に就任してからわずか24時間余りでしたが、麻生総理は国連総会に出席し、日本政府を代表して一般討論演説を行いました。そのなかで総理は、経済的繁栄と民主主義を通じ平和と幸福を実現するという明確なメッセージを国際社会に訴えました。

一部の報道で、麻生総理が、外務大臣を務めた2005年から2007年の間に中国や韓国との関係を悪化させ、アジア地域で緊張を高めたという論評がなされましたが、私は、このような事実に基づかない論評に大変驚きました。麻生総理は、外務大臣として、中国及び韓国との対等なパートナーシップを強化し、両国との関係強化に大きく貢献しました。このことは、両国の当時のカウンターパートも等しく認めるところです。外交の最前線に復帰した麻生総理におおいに期待しています。

また、麻生総理は、ユーモアのある人物でもあります。記憶に新しいのは、国連総会での演説の際、機材の不調のため通訳の声が聴衆に届いていなかったのですが、それに気がついた総理がジョークで会場を和ませるという場面がありました。

さて、当地ニューヨークでは、敬老の日にちなみ、9月12日から21日まで「シニア・ウィーク」が開催されました。今年で2回目迎えるこの行事は、日系人会とJAMSNETが共催し、大盛況に終わりました。参加してくださった約1000人の日本人・日系人の皆様、そしてご尽力頂いた関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。ニューヨークにお住まいの高齢者の方々が、コミュニティーのつながりを感じながら元気に楽しく暮らせるよう、今後も総領事館として積極的に取り組んで参ります。

From the Ambassador's Desk 2008年9月号(9月24日発行。原文はこちら)

Airlifting activities in Afghanistan

日本では、新しい総理が誕生しました。わずか2年の間に3人目の総理ということもあり、皆様にはなかなか名前を覚えて頂けないのが残念ですが、新総理の名前は麻生太郎といいます。これまで自民党幹事長であり、総務大臣、外務大臣を務めた経験があり、若い頃、クレー射撃の選手としてオリンピック代表になったこともあるスポーツマンです。山積する課題と重要法案の審議を控え、新総理のリーダーシップに期待したいものです。

さて、当地ニューヨークでは、今年も同時多発テロという大惨事が起きた9月11日を迎えました。9.11同時多発テロ事件では、24名の日本人も犠牲となりました。2001年当時私は米国に滞在しており、米国の人々の悲しみとそれを乗り越え立ち上がろうとする人々を目にしました。忘れられない出来事です。亡くなった方々、そしてご遺族の方々のことをいつも心に思っています。

テロ対策は、日本政府にとっても重要な課題であり、米国をはじめとする諸外国とともに積極的にテロ対策に取り組んでいます。例えばインド洋における海上給油活動や、イラクでの自衛隊による航空輸送、ODA(政府開発援助)によるアフガニスタンやイラクへの経済協力など、幅広くテロ撲滅に向けての努力をしています。


良い弁護人の仕事は何ですか

さらに、外国に滞在する自国民を保護するため、2006年9月、外務省は、在留邦人と旅行者の多いNYを含む米国、カナダに滞在している方々のために、「全米・カナダ邦人安否確認システム」(Emergency information service system (EISS)) を立ち上げました。全米・カナダ地域において大規模な災害が発生した場合に、被災地にいる方の安否・所在を直接確認できるシステムで、テロ発生時のみならず、ハリケーンなどの自然災害でも有効です。

海外で緊急事態が発生した場合、国際電話のできる携帯電話等の適当な連絡手段を持ち合わせていないことが多く、また、電話回線が混雑したり、電話会社がサービスを停止したりすることがあるため、日本の家族等と連絡ができない可能性があります。EISSは、被災地にいる方が公衆電話等からでも無料で自らの安否に関する伝言をデータセンターに残すことができ、それを日本にいる家族等がいつでも、直接聞くことによって、被災地にいる方の安否を確認することのできるシステムです。

また、私たち日本人にとって、テロ対策を考えるとき、北朝鮮による日本人拉致問題を切り離すことはできません。米国の方々が、拉致問題に対する理解と被害者及びご家族への共感を示して下さっていることを感謝しています。

From the Ambassador's Desk 2008年8月号(8月20日発行。原文はこちら)

高村外相

8月1日、福田総理は内閣改造を行いました。今時改造の特徴は、自由民主党内有力者全員が、入閣、あるいは同党執行部に入ったことです。ちなみに、自由民主党幹事長には、政治スタンスの違いから福田総理と距離を置いていた麻生太郎議員が就任しました。内閣の新しい顔ぶれの中で、外相は引き続き高村正彦議員が任命され、基本的外交政策は維持されることになります。日米関係において注目される安全保障面では、防衛大臣に若手で、かつてウィリアム・ロス上院議員の政策スタッフとしてマンズフィールド法案を手がけた、米国にも縁の深い林芳正議員(47歳)が就任しました。

当地ニューヨークでは、このたび、ジャパン・デー2009実行委員会委員長に、川俣喜昭さんが選出されました。2008年の委員長を務められた品川道久さんを引き継ぐことになります。川俣氏は三菱東京UFJ銀行米州本部長です。

2007年に始まったジャパン・デーのイベントは、ニューヨークの皆様に日本の伝統文化と現代文化の両方にふれて頂く機会をもうけるものです。皆様の地道な活動が、日米両国の絆を深める一助となります。ニューヨークの日本人および日系人社会がますます発展することを願っています。

先月は、著名な起業家ロッキー青木さんと、ニューヨークでご活躍され尊敬を集めた日系人弁護士マイケル・W・オオシマさんが亡くなるという悲しい知らせもありました。お二人は、米国における日本人・日系人コミュニティーの発展のために中心的な役割を果たされました。心よりご冥福をお祈りしたいと思います。

From the Ambassador's Desk 2008年7月号(7月15日発行。原文はこちら)

7月は多忙で行事の多い月でしたが、何よりも、日本はその北の大地で、世界の指導者を一堂に集める定例の会議、G8北海道洞爺湖サミットを主催しました。このサミットは、記者会見で福田総理大臣が指摘した通り、極めて重要な時期に開催されました。現在、地球温暖化の進行、原油や食料価格の高騰、金融市場の緊張などの世界規模の問題が人々の生活に与える影響が痛感されています。世界の指導者たちは、この困難な状況の中で会議を行い、直面する諸課題にどう対処すべきかにつき活発な議論を行いました。そして、その議論の結果、温室効果ガス排出削減の長期目標の必要性が認識されるなど、多くの成果が生まれました。

これらの成果はまだ長い道のりの中での第一歩と言うべきものですが、世界の指導者たちが力と気持ちをあわせて今後国際社会が進むべき方向性についての議論を一層発展させていくための基盤を整備したことは非常に重要な成果です。

なお、サミットの機会には福田総理大臣とブッシュ大統領の間で日米首脳会談も行われましたが、この会談も洞爺湖サミットの成功という全体像の重要な構成要素でした。世界経済の第一、第二の大国として日米は緊密なパートナーシップに基づき協力を進めていく責任を有しているのであり、その両国の首脳が会談を重ねることには大きな意味があります。例えば、米国経済の健全化は世界経済に決定的な影響を及ぼす要因です。また、日米同盟の強化がアジア太平洋地域の平和と安定の礎であるとの認識は世界でも広く支持されています。強力な日米パートナーシップは、毎年開催されるサミットの究極目標でもある国際社会の平和と安定のためにも極めて有益です。

ところで、私は8日にフィラデルフィアに出張し、同市のナッター市長やモリカワ在フィラデルフィア日本国名誉総領事との間で一種の「サミット」を行いました。フィラデルフィアの友人との会談は楽しいもので、日本と兄弟愛の町フィラデルフィアの間の協力や共通の関心事を広範に議論する絶好の機会になりました。

From the Ambassador's Desk 2008年6月号(6月20日発行。原文はこちら)

6月1日のJapan Day@Central Parkは皆様にご協力のおかげで大成功となりました。謹んで御礼申し上げます。

さて現在、太平洋の向こうでは、7月7〜9日のG8北海道洞爺湖サミットの準備が着々と進みつつあります。このサミットでは、世界の指導者たちが世界経済、環境、アフリカの開発などの重要なテーマを議論することになります。

今回のG8首脳会議は、緊密な国際協力なしには解決が望めない21世紀の新しい諸課題に取り組んでいく上で極めて重要な機会となります。食糧のエネルギー転用が世界的な食糧危機に拍車をかけ、高騰する原油価格が重荷として世界経済にのしかかり、国際社会が一致して気候変動に取り組むことがますます重要になるという今日の複雑な状況の中、このサミットは国際社会がこれらの課題に力をあわせて取り組む方向性を決めるための重要な機会となるでしょう。

これに先立って、TICAD IVというアフリカの開発等に関する国際会議がわが国で開催されたところですが、私はその開催と成功を心から喜んでいます。アフリカという地域は、全地球的な問題の影響を最も受けやすい地域であり、国際社会がその声に耳を傾け、アフリカの発展をどう確保していくかを議論することには大きな意味があるからです。

また、福田総理は、このTICAD IV終了後の6月初めに独、英、伊の3カ国を歴訪し、G8サミットで顔をあわせる各国首脳との二国間会談を行いましたが、ローマ滞在中には世界食糧サミットにも出席し、1億ドルの緊急食糧援助や貧困農民に対する5000万ドルの食料増産支援などの支援策を発表するとともに、食糧問題に関する国際協力の必要性を改めて強調する演説を行いました。これも非常にタイムリーで重要なメッセージであったと思います。 なお、これに先立つ5月には世界を大規模な天災が襲い、国際社会はミヤンマーでのサイクロンと中国の四川大地震で数え切れないほど多くの方々が亡くなるという悲劇に直面しました。我が国はこの両国に深甚なる弔意を伝えるとともに、両国が必要とする緊急支援の実施に懸命に取り組んだところです。

From the Ambassador's Desk 2008年5月号(5月12日発行。原文はこちら)

 

4月は桜が満開になるシーズンです。ヘッドラインに記したとおり、私は先般エセックスの桜祭りに出席しました。


populatio montour滝ニューヨーク

そこでまず感じたことは、現在の極めて良好な日米関係の基礎である日米両国民の草の根レベルでの繋がりの確かさです。桜の苗木が初めて日本からワシントンDCに寄贈されたのは1912年のことですが、それ以来米国の人々は、日米関係が厳しい局面を迎えた時代を含め、この花を大切にし、今日米国各地で桜祭りが開催されるに至るまでその名声を広めた訳です。両国国民のお互いの善意と敬意の象徴となった桜の木を見て、私はこの伝統的な友好関係を一層強固なものにしたいという気持ちを新たに致しました。

もう一つ私が思い出したことがあります。それは4月に新たな学校への船出を迎えた日本の子供たちの笑顔です。その笑顔は夢に充ち満ちています。これについて私が望むのは、彼らが文化の異なる子供たちとともに夢を一層強固なものにすることです。様々な国籍の子供たちがともに生活し勉強する都市NYで暮らして私が常に強く感じるのは、日本人を含むこの町の子供たちが歴史・文化の違いをいとも簡単に乗り越えるのみならず、お互いのやりとりの中で夢を一層豊かなものにしていくということです。これは私の確信であり、私は教育・文化交流の分野での国際協力を一層発展させる決意を新たにした次第です。

From the Ambassador's Desk 2008年3月号(3月25日発行。原文はこちら)

 

先月末、2年振りに日本に帰国してきました。1週間程度の短い滞在でしたが、町村官房長官や高村外務大臣、また外務省幹部と面談しました。また、政界や財界の関係者とも意見交換を行ってきました。東京における最近のホット・イシューは、本年わが国が主催する大きな国際会議、即ち5月の第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)と7月に開催される北海道洞爺湖サミットでした。特に、洞爺湖サミットでは、環境問題、とりわけ世界の温暖化ガス対策が大きなテーマとなっています。日本は環境保全の先進国として努力していることもあり、京都議定書に参加していない米国の動向がカギとなっています。ともあれ、いずれの国際会議も開催まであと数ケ月を残すのみとなり、準備に係わる関係者に大きな緊張感が漂っていたことが印象的でした。

滞在中の最大のベントとしては、当地ジャパン・ソサエティー主催の百周年記念晩餐会を挙げなくてはなりません。本記念晩餐会に天皇皇后両陛下の御臨席を得ることができたことは大変光栄でした。また、官房長官、外務大臣、駐日米国大使を始めとする政治・経済・文化等各界の有力者も多数参加し盛大に行われました。現在、日米関係は極めて良好な関係にありますが、これもひとえにジャパン・ソサエティー他多くの団体や関係者が日米関係強化のために長い時間をかけて尽力してこられたたまものであることを改めて痛感させられた次第です。

From the Ambassador's Desk 2008年2月号(2月22日発行Japan Infoに一部加工した抜粋を掲載。Japan Info掲載内容はこちら)

 

転職の薦め
(Nippon Club News 2008年1月号「春夏秋冬」に掲載された内容から転載)

当たり前のことだが、「転職」すると見える世界が違ってくる。ひょんなことから昨年3月末(当館注:2006年4月に総領事として着任)に三十九年間勤めた民間企業からお役所(外務省)に転職した。それまでは丸の内界隈こそが日本の中心地だとかたく信じて疑わなかった。 ところが、外務省本省のある霞ヶ関で引継ぎのために国会やお役所周辺をウロウロしだして一週間も経たないうちに、やはり永田町と霞ヶ関が圧倒的に日本のパワーの中心であり、ここ以外の場所の重要度は格段に低いと感じる(錯覚する?)ようになった。丸の内から歩いて二十分程度の至近距離にこのような別世界が存在するとは齢六十を過ぎるまで思いつきもしなかった。

これには私自身の「住めば都」という楽観主義・自己中心主義的な性格もあろう。更には国会議事堂とか首相官邸とか各省の建物とかこれまでに訪れたことのない国政を担う人々と場所を生まれて初めて訪れた感激に由来するのかも知れない。

とはいえ、これまで役人とお付き合いがなかったわけではない。むしろ民間人としては、主に仕事を通して知り合った各省の官僚には友人も多いほうだと思う。自分なりに「お役所」を理解しているつもりであった。

しかし、実際に役人生活を始めて仕事の進め方を内側からみると改めてびっくりすることも多い。 総領事館の業務はパスポートやビザを発給・更新する領事業務などの在留邦人支援に始まり、テロなどの危機対応、広報・文化活動、政治・経済情勢のフォロー、民間セクターの支援など幅が広いが、高度な「外交活動」よりもむしろ地味な「草の根運動」的な業務が多い。それだけに民間のビジネスを経験してきた人にとっては仕事の内容自体にそれほど違和感もない。

それでは何が違うのか。乱暴にいえば行動原理が全く違うのである。どちらが良いかは一概にはいえない。また、最近の官僚バッシングは少々行きすぎであるとも思う。

さて、民間との違いの一例をあげると、民間企業では新たな挑戦をしない企業は競争から脱落する厳しい環境にあるので「新しいことに挑戦するリスクを恐れてはならない。失敗してもそこから学び、次の成功に結びつければ良い。」と見ようによっては鷹揚に考えるのに対して、お役所は「国民の血税を使わせていただいているのだから何をしても失敗は許されない。」という考えになる。これが極端になると「失敗しそうなことはやらないほうが良い。」とか、「前例にないことはやらない。」ということになる。過度の官僚バッシングを続けると、この傾向がますます強くなってしまうことが懸念される。

思うに、現状はひところの「官尊民卑」が逆転して「民尊官卑」(官僚のすることは全てダメ)になってしまっている。これでは本来優秀な官僚を使いこなすどころかますます萎縮させることになり、国民全体にとってマイナスであろう。 一方、民間企業では当たり前のように行っている「顧客重視」、「効率性の追求」、「知恵と工夫」、「人事や財務・会計の管理手法」などの業務改善については、民間から学べることも多いと思われる。

民間企業からお役所に転職してわずか一年半の経験でしかないが、新たな経験から学ぶことも多い。逆にお役所から民間企業への転職で民間企業が得られるものも大きいのではないかと思う。

要は官と民のお互いがプラスになるような関係を構築することが望まれるし、そのひとつの方策は「転職」による人事の交流であろう。

From the Ambassador's Desk 2008年1月号(1月25日発行。原文はこちら)

 

あけましておめでとうございます。皆様よいお正月を迎えられたでしょうか。本年もどうぞよろしくお願いいたします。 今年はねずみ年。人から聞いた話ですが、証券取引の世界では、ねずみ年は「繁栄の年」だということで、それにあやかれば、自分の目標や目的に向かって邁進すれば「繁栄」や「成功」の1年につながっていくのではないかと思います。

総領事館の目標の一つは、日米関係を更に強化することです。昨年11月にワシントンを訪問された福田総理は、両国のパートナーシップの関係を中長期にわたって強化するため、3項目からなる新たなイニシアチブを発表しました。
1つ目は、米国のシンクタンクや大学に対する支援を通じて、両国間の知的交流を強化すること、
2つ目には、JETプログラム参加者とのネットワーク強化や日系人との交流強化など、両国民の草の根レベルでの交流を進めること、
そして3つ目には、中等・高等レベルで日本語教育を強化することです。

 当館でも今後その一端を積極的に担っていきます。このイニシアチブを進めていくことで、ニューヨーク及び当館が管轄する地域の方々と、更に進んだ関係が築けることを期待しています。


From the Ambassador's Desk 2007年12月号(12月21日発行。原文はこちら)

Amb. and Mrs. Sakurai with Mr. Frank Medica, Executive Director (Center) and members of the Hamilton Madison House and its Japanese Clinic

© Yomi Time

11月26日、移民に対する支援活動をしているハミルトン・マディソン・ハウスという非営利社会福祉団体を訪問し、ニューヨークで日本人向けにメンタルヘルスに関する専門的な相談を行っている「日米カウンセリングセンター」を見学してきました。

 ニューヨーク市周辺には6万人以上の日本人がいますが、中国人にとってのチャイナタウン、韓国人が集まるコリアンタウンのような日系のコミュニティがニューヨークにはないため、どこに助けを求めればよいのかわからない日本人が少なくないと聞いています。

日米カウンセリングセンターは、1983年以降20年以上にわたって、こうした日本の方々の心の支えになってきました。年間相談件数は2千件にものぼるとのことです。

こうした非営利団体の活動資金は、時にはニューヨーク州又は市政府による補助金から、時には私的な寄付金から成り立っていると伺いました。日本人を含む移民を支えてくださっているアメリカの皆様には、この場を借りて御礼申し上げるとともに、今後も引き続きこういった団体へのご支援をいただければと願っています。

From the Ambassador's Desk 2007年11月号(11月16日発行。原文はこちら)

 

先月、最近離任された当地の中国総領事・大使の送別会を目的として、当地に駐在するアジア諸国の総領事夫妻に声をかけて昼食会を開催しました。

基本的に社交の会であり、中国総領事のほか、韓国、フィリピン、インド、パキスタン、インドネシアの各国総領事(夫妻)が参加されましたが、日ごろ交流の少ないアジア諸国の総領事・大使が集まる貴重な機会であったと思います。このようにインフォーマルな形でアジア総領事が集まって種々の問題等について話し合う機会を持つことは有意義と思います。

外務省は、数年前から日系米国人との連携強化に力を入れていますが、その一環として、9月23日には、当地若手日系人・日本人の集まりであるJAJA(Japanese American and Japanese in America)のメンバーを公邸に招くと共に、文化・映像関係及び在米日本企業に勤める日本人も呼んでレセプションを行いました。西海岸と比較して、NYにおいては若手日系人同士の交流の場が多くないと伺っています。当館とJAJAメンバーとの交流の幅を今後も広げるとともに、当館が仲立ちとなって若手日系人と日本人社会とのネットワーキング作りを助力していきたいと願っています。

From the Ambassador's Desk 2007年10月号(10月22日発行。原文はこちら)

 9月18日、ニューヨーク・ボタニカル・ガーデンのKIKU展オープニングに参加してきました。このKIKU展は、ブロンクスにあるニューヨーク植物園が5年前から日本の新宿御苑と協力して練り上げた企画であり、国外ではなかなか見られない展示です。美しい菊の展示だけでなく、日本の芸術や文化を紹介する大人や子供向けのプログラムもあります。日本を代表する花と言えば桜が有名ですが、菊もまた日本の国家的なシンボルであり、このようにニューヨークで「KIKU」を通じた文化交流ができることは大変光栄なことだと思っています。

前号のJapan Infoで、水曜日に総領事館の窓口を昼休みにも開館している試みについて紹介しましたが、来訪者から好評であることを踏まえ、11月からは、いよいよ平日毎日昼休みに窓口を開館することにしました。多少混雑する可能性はありますが、これまで長年、お客様からの要望があった昼休みの開館を実現することができ、職員一同、うれしく思っています。

当館の管轄地域には、届出ベースで約10万人近い日本人が居住していますが、総領事館に比較的近いNYトライステートエリア以外の地域の人々は、NY市にある総領事館に赴くことは困難な場合もあるため、総領事館では、春と秋に一日総領事館を各地で開催し、好評を得ています。今秋には、フィラデルフィア、バッファロー、ピッツバーグで一日総領事館を開催しました。

今月のJapan Infoでは、ウェストバージニアのマンチン知事と日本企業との懇談会について紹介しました。マンチン知事にも喜んでいただけましたが、このような機会が日本企業と管轄地域の関係強化につながればと思っています。

From the Ambassador's Desk 2007年9月号より(9月21日発行。原文はこちら)

©Yomi Time

Labor Dayもあけ、本格的に秋が始まりましたね。リフレッシュして新しいことを始めるよい時期ではないかと思います。 総領事館の領事部、広報センターでは、これまで閉まっていた昼の窓口を、在留邦人等からの要望を取り入れ、昼休みにも開館することとしました。まずは、今月から週一回、試験的に水曜日に昼休みの開館を始めています。

また、より利用しやすい総領事館を目指し、総領事公邸の民間への開放も進めてきています。例えば、日本文化・ブランド・産業技術・観光等をNYに紹介したい民間の機関や団体が、公邸で事業を行う機会を提供することも可能ですし、米国人とと在留邦人の交流を目的としたプログラムがあれば、公邸をお使いいただくことも検討します。

その一環として、9月8日には、当地に住む日本人・日系人を対象とした「女性の健康維持と乳がんの早期発見」に関するセミナーが開催されました。公邸開放としては、4回目の試みですが、今回は75名の男女参加者が参加し、公邸シェフのケーキとお茶を楽しみながら、日本から招かれた講師の話に熱心に耳を傾けました。 今後も、こうした新しい試みをどんどん続けていきたいと考えています。

From the Ambassador's Desk 2007年7月号より(7月13日発行。原文はこちら)

With the men's winners of the Japan Run

 

記念すべきJapan Info メール版第1号をご購読いただき、どうもありがとうございます。

Japan Infoはこれまで紙媒体の形で、主として日本に関心をもつ皆様に郵送させていただいておりましたが、発行頻度を増やし、日本関連情報やニューヨークとその周辺の当館管轄地域における日本関連文化イベント、当館の活動状況などを皆様にタイムリーにお伝えすべく、今後は月刊で発行することとなりました。 良質な紙面とすべく努力しますが、皆様からのご意見も受け付けておりますので、随時お寄せください。

6月3日のJapan Dayには、約2万人近くもの参加を得て、大盛況で終えることができました。私が何よりもうれしかったことは、予想以上に多くの人々の参加を得られたこと、とりわけ大勢の米国人市民が参加してくださったことです。会場のキャパシティの関係でどのテントにも並んでお待ちいただかなければならなかったことは残念ですが、日本文化への関心の高さを改めて認識することができました。来年も同様のイベントを行いたいと考えており、形態が決まり次第、本マガジンや総領事館ウェブサイト等でもお伝えします。ご期待ください。

 



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