■核戦争
かつて、核戦争の脅威が叫ばれた時代があった。アメリカとソ連が全面核戦争を引き起こし、地球人類が滅ぶというシナリオだ。ところが、最近あまり聞かない。大騒ぎしている間は大丈夫で、忘れたころにやってくる、というのはよくある話。
もし、核戦争が起こったら、勝者は誰か?かつて、アメリカのアイゼンハワー大統領はこう言った。
「核戦争は、敵を倒すことと、自殺することが一組になった戦争だ」
たしかに、勝者を予測するのは難しい。ただし、生き残るのは間違いなく原子力潜水艦だろう。海底深く潜航すれば、地球上の探知機はもちろん、軍事衛星からも探知できない。さらに、食糧の問題さえクリアすれば、一度も浮上することなく、20年間も潜り続けることができる。
原子力潜水艦は攻撃力も凄まじい。射程距離1万kmの戦略核ミサイルを20発も搭載し、地球上のあらゆる都市に撃ち込むことができる。1発で、1つの都市を壊滅させる破壊力をもつ。さらに、原子力潜水艦はミサイルを海中から発射できるので、身を隠した状態で、攻撃できる。かつて、駆逐艦に追われ、海底を逃げ回っていた惨めな潜水艦は、今は地上最強の軍事ユニットに進化している。
潜水艦は異常な閉鎖世界である。呼吸できない海水と、鋼鉄をも押しつぶす水圧に囲まれ、乗組員は逃げも隠れもできない。潜航中にトラブルが発生し、浮上できなければ、全滅する。気の休まらない世界だ。だから、映画やドラマの題材にはうってつけなのだろう。実際、潜水艦ものの映画は多い。一方、TVドラマではあまり見かけない。あの閉塞感と緊張感を毎週見せられては、息が詰まる。やはり、2時間で完結する映画が似合っている。
その数少ない潜水艦ドラマの一つが「原潜シービュー号/海底科学作戦」だ。制作は、B級SFドラマの名プロデューサー、アーウィン アレン。この作品は同じアレン作の「タイムトンネル」と違い、LDもDVDも販売されている。比較的入手しやすい作品だ。
ストーリーは、ネルソン提督とクレイン艦長が指揮する原子力潜水艦シービュー号が、世界中の海を航海し、様々な事件を解決するというもの。一応、SFなのだが、国家紛争あり、エイリアンあり、亡霊あり、なんでもあり。とはいえ、原子力潜水艦シービュー号の美しいフォルムと、潜水艦ではありえない広大なフロントウィンドウから眺める海底は絶景。原子力潜水艦というよりは、動く水族館というところ。
■潜水艦の歴史
原子力潜水艦以前の通常潜水艦は「潜水も可能な船」で、言ってしまえば、なんちゃって潜水艦。というのも、主動力のディーゼルエンジンが使えるのは水上だけで、電気モーターで潜航しても、バッテリーは37時間しかもたない。しかも、潜航時は、時速14kmがやっと。時速55kmを誇る駆逐艦に見つかろうものなら、海底に逃げ込むしかなかった。とはいえ、最大深度はせいぜい100m。対潜水艦用兵器の爆雷をバラまかれ、海底のもくず ・・・ 哀れなるかな潜水艦。
また、哀れなのは乗組員も同じだった。スノーケル有効深度を超えて潜航すれば、空気が吸い込めないので、酸欠、減圧で、耳鳴り、吐き気を引き起こす。真水が貴重で、皮膚病の洗浄にも事欠いた。潜水艦乗りにしてみれば、修行のような毎日だった。
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